プロサッカー選手として、Jリーグ、海外、そして日本代表の舞台を駆け抜けた城彰二さん(32)。2008年1月27日三ツ沢公園球技場で、一昨年の12月に横浜FCを最後に現役生活を終えた城さんの引退試合が行われ、この日集まった10,015人のファンと別れを惜しんだ。
13年間でJ1歴代5位の95得点(230試合)、国際Aマッチ36試合7得点の成績を残したストライカー、城さんの功績を鑑みて実現した引退試合。1996年アトランタオリンピック、1998年フランスワールドカップ出場選手を中心に結成された「JO DREAMS」と、城さんが横浜FCに在籍した2003年から2006年のメンバーが中心の「横浜FCオールスターズ」が対戦するという、ファンにとっても、出場する選手にとっても胸が躍るような対戦となった。
青く澄んだ冬空の下、選手たちが入場する。三浦知良選手、中山雅史選手、前園真聖さん…、そうそうたる顔ぶれに歓声が挙がった。最後に登場したのは主役である城さん。愛娘、夢叶ちゃんの手を引いて一歩一歩ピッチを踏みしめる表情は穏やかで、この日を迎えた喜びが伝わってくる。
キックオフの笛が鳴った。前半、城さんは「JO DREAMS」で出場。前半7分、城さんはパスを受けるとドリブルで一人をかわしてシュート、先制点を挙げる。「JO DREAMS」の監督は井原正巳さん。日本代表の歴史を築いてきた懐かしいメンバーが代わる代わる現れスタンドを沸かせた。メディアで活躍中の小倉隆史さんにはファンからしきりにヤジが飛び、試合中の選手も思わず笑顔に。公式戦では見ることができない光景だ。
後半、城さんは「横浜FCオールスターズ」のユニフォームに着替え、ピッチに。ともに2トップを組んできた三浦選手とグラウンドにひざまずき、ボールの上で手を重ねる姿は、横浜FCサポーターの胸に深く刻まれたことだろう。城さんは後半40分にドリブルから2点目、そして43分豪快なヘディングシュートで3点目を決めてハットトリックを達成。城さんの全得点により、試合は2−1で「横浜FCオールスターズ」が勝利を収めた。試合後、ファンが待つスタンドに駆け寄った城さん。夕暮れの球技場は、馴染み深い「ジョーショージ!」コールがいつまでも鳴り響いていた。
試合後の記者会見で、城さんは現役生活を振り返り、こう語った。「高校からジェフ市原でデビューした時のゴール。そこから僕のプロ生活はスタートして、最後は横浜FCで終わることができた。でも、つらかった時期の方が思い出に残っています。横浜F・マリノスからヴイッセル神戸に移って、1年で初めて戦力外通告を受けました。順風満帆に進んできた自分が一気にがけ底に落ちていって、そこから横浜FCが拾ってくれた。本当につらかった時、でもそれが最大のチャンスでもあった。これからの人生で苦しい時期があっても、糧にできると思います」。
「サッカーとは夢だと思う。ひとつひとつ夢を持って、目標を持って、それに向かって選手やサポーター、すべての人がひとつになることがサッカーの魅力」と話す城さん。
フランスワールドカップでともに闘った中山選手は、城さんとの思い出を「当時(岡田武史)監督から城を中心に、と言われて、城も必要以上に責任を感じてしまったのかなというところがありました。その部分で自分がサポートできなかったことが悔しさとして残っていますね」と振り返る。日本代表は3戦全敗、期待を受けながら得点することができず、激しいバッシングを浴びた城さんを思いやる発言だった。中山選手は40歳の今なお、ジュビロ磐田で現役選手として走り続ける。「引退という選択はいろんな悩みを抱えながら、その中で出した答えだから尊重したい。辞めていく人たちは外からサッカーを見て感じたものを伝えて、それを僕らが感じ取ってグラウンドの上で少しでも表現していければ、と思います」。
そして現役最年長プロサッカー選手である横浜FCの三浦選手は「2006年のシーズンは大体いつも(城)彰二と2人で2トップを組んでいました。その年にJ2で優勝してJ1に上がれたこと、そして日本代表で一緒に闘ったこと。それが思い出として残っていますね」と懐かしむように話した。「彰二は子どもの頃からほとんどの時間をピッチの上でプレーしてきて、いろんな経験があるのだから、日本代表、Jリーグ、サッカースクールの子どもたち…、得てきたものをみんなに伝えていくことが可能だと思います」とエールを送った。
城さんは最後にファンへ向けて、「僕が最後に伝えたいことは夢です。夢に向かってチャレンジしてください。僕もチャレンジします」とメッセージを残した。「監督になってもう一度Jリーグのピッチに戻ってくる」という城さんの夢はサッカーとともに、永遠に続いていく。
● 記者の感想●
日本が初めてワールドカップ出場を果たした1998年のフランス大会。その時私は雑誌の読者レポーターとして現地観戦する機会に恵まれました。私が観たのは3戦目のジャマイカ戦。日本は予選リーグ敗退が決まっていましたが、ゴン中山選手のゴールは本当に感動して一生心に残る思い出です。当時の仲間が集まった引退試合、城さんはとても嬉しそうでした。この日は選手の家族がたくさん応援に駆けつけていました。愛しそうに夢叶ちゃんを抱く城さんは、優しいパパの顔に。試合後、ストレッチ中のカズ選手とじゃれ合う息子さんたち…。厳しい世界で闘うスター選手たちは、家族という宝物に支えられているのだなあと思いました。
“城彰二”の姿を胸に焼きつけてほしい、そんな願いが込められたような一日。ゴールに向かってピッチを走り抜ける城さんを見ることができなくなるのは寂しいけれど、城さんが夢を叶えていくことを、みんなが応援しています。
13年間本当にお疲れさまでした。
