陸上の日本代表選手としてオリンピックの決勝まで経験している高野進氏(現・東海大学准教授)を中心に発足した日産スタジアム・アスレティクスアカデミー(通称NSAA)。主に年齢別に5つのGradeに分かれており、現在、下は6歳、上は70歳代の方までと様々な人々が参加している。その魅力と開校した経緯について代表の高野進氏に尋ねてみた。
「NSAAを作ったきっかけは?」
指導している東海大学陸上部が練習している平塚の競技場は7歳の子供から日本を代表するトップアスリート、70代のマスターズの選手までが体を動かしている素晴らしい環境で、これをもっと大規模に日本中に広めたいと思っていたところ、横浜市が指定管理者制度を適用し、日産スタジアムを使って、陸上アカデミーをはじめようという話があり、始めました。
「NSAAの魅力とは?」

日産スタジアムのような何度も好記録が出る国際レベルの競技場で、週3回も練習ができること。このような最高の環境が整っている中で、世界に通用するトップレベルの選手を育てることはもちろん、ここに参加している人々に走る喜びを感じていただき、「走ること」、「体を動かすこと」に対して人生の中でフルに関わってほしい。
以上のように高野氏の話を聞いていると、「走ること」、「体を動かすこと」を通じて様々なことに対してのモチベーションを学べるということを、最も重要視しているように感じた。人間がひとつの目的を達成するにあたって、それまでの段階が最も重要であるはずなのに、ショートカットされている現代社会。スポーツをしたことのある人ならば、誰もが抱いたことがあるだろう、試合前のあの気持ち、緊張感。あの時と同じように集中し、注意して生活していれば、目的が達成された時の喜びも一入、病気にだってかからないだろう。
今の社会に足りないのはそういう部分ではないだろうか。
「人間とは、アスリートのような気持ちで毎日を生きるべきである」という高野氏の熱い思いが伝わってきた。高野氏の新たな挑戦が始まった。
「ずっと、もう一度跳びたいと思っていた」
NSAAのGrade5に所属している、伊東泰(23歳)さんはそういった。
伊東さんは高校時代、陸上部に所属し、専門種目は今と同じ走高跳だった。当時の記録は180pそこそこと、ぎりぎり県大会に出ることのできるくらい平凡な記録だった。その後、彼に転機が訪れる。大学に入り、陸上部に入部すると、1年足らずで未公認ながら199pの高さをクリアした。眠っていた実力がついに開花し、2mの大台が目の前に見えてきた。しかし、ある事情で陸上部を退部。そして大学を退学し、しばらく陸上から遠のいた生活を送ることに。
しかし、心の中ではずっと「もう一度跳びたい」と思っていた。そんな時、NSAAの存在を知り、入会。久々の練習、そして久々のマットの感触に感動。現在は、再び大学生として、学業とNSAAの練習の両立を図っている。
「NSAAは、一人一人に合ったメニューを作成してくれる。もし、メニュー内容に疑問を持った時はすぐに聞くことができ、自分の意見も練習内容に反映できるので、練習をやりたいという気持ちが自然に生まれてくる。」と伊東さんはいう。これが学校の部活動にはない、NSAAの魅力であり、これが伊東さんをはじめとする、受講生達の練習に対してのやる気を引き立てている。そして、高野氏をはじめとする優秀なコーチ陣の存在も忘れてはならない。これまで第一線で活躍し、国際経験豊かな彼らから得るものは大きい。このような理由からNSAAでは高いモチベーションを保った質の高い練習ができるのである。

「自分にとって陸上とはどのような存在か?」という問いに、「陸上は自分の中の輝き、というか光ですね。そして生きがいのようなもの。」と生き生きと答える伊東さん。その目は自身の可能性に満ち溢れているように見えた。
「走ること」「体を動かすこと」はこんなにも素晴らしいものなのだ」という気持ちが彼の体全体からにじみ出ていた。
現在、彼は夢の大台2m突破のため、自身が尊敬する比留間コーチとともに練習に取り組んでいる。彼は、きっとこれからもNSAAと共に走り、跳び続け、人生を満喫するのだろう。

