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トップページ > ハマスポWave > ワクワク体験取材!〜ハマスポWave記者が行く!
[今回の取材先]
セイコー スーパー陸上2007 ヨコハマ
会場:日産スタジアム
[ハマスポWave記者]
2007年10月11日Up

その先への一歩
Text:ナカガワヒロシ
「筋肉の質が違う、腱の長さも違う。(外国人選手との)体格やタレントのせいにしてしまうと、そこで「戦い」は終わってしまう。相手と条件が違う、ならば他の部分はどうなのか?レース戦術やフォーム全て優れているのか検証すると、いじれる部分がかなりある。そこをどうどこまで変えていくのか、世界との差を詰めるにはどうすべきかを探っていこうと現場も科学委員会も一致しています」

日本陸上競技連盟・科学委員会の持田氏は、走者の後方よりレーザーを照射したり、三次元座標を確保する特殊カメラ、ハイスピードカメラ等を駆使し諸々のデータを収集・分析されています。
日本陸連科学委員持田尚氏
日本陸上競技連盟・科学委員会の持田尚さん

この日見せて頂いた分厚い資料は、何と7月に行われた大阪世界陸上でのデータ。
決勝のレースが終わったその夜に解析されたデータで、「ホットなうちに返すべき」と判断された基礎情報は「即時フィードバック」と呼ばれ、すぐに競技者及びメディアに公表されているのだそうです。
この「科学委員会」での仕事を専門としているのではなく、各々が持つ専門知識を陸上の為に生かすべく全国から「その他の社会活動」として集結される委員の方々の能力の高さ、熱意には頭が下がります・・
自身も短距離・中距離走、投てき、跳躍という、相反する身体能力が必要な競技全てで一線級の記録を残さなければならない「十種競技(デカスロン)」の選手であった持田氏。その経験を背景に、様々な種目に関する論文を発表されている「研究者」としての顔も併せ持つ持田氏に、日本人がメダルを勝ち取れるスプリント種目は?と質問したところ、「過去の実績から考えても、400メートルに可能性を感じている」との事。
データも少なく、分析し難いという「400メートル」に、科学委員会でも新しい
アプローチを試みているのだとか。
「個人的に思っているのですが・・」と前置きしつつ、「(200メートルの)
高平選手(富士通)や末続選手が400メートルに挑戦してくれないかと」期待されているそうです。
高野進選手の持つ日本記録はいつ更新されるのか!?これからは400メートルに挑む日本選手に注目したいと思います!

「よくあるパターンなのですが、いろんな人に様様なアドバイスを求め過ぎる選手は結局消化しきれず自分のものにできない。いろんなことを聞いたその中で、「おっ?」と思った事をまず抽出できて、それを自分なりに解釈し自発的なイメージを作り、体現できないとスポーツの動作は完成しない。データを見る時も同じで、結局数字を見てこれがどういう動きを意味しているのか、「感覚」に翻訳できるかどうかが難しいんです」

今回競技場内のFM放送「アスリートFM]の解説者として参加されている、アテネオリンピックでの日本男子リレー4位入賞にも貢献された土江寛裕氏。現在は城西大学陸上競技部監督として、「伝えること」の難しさを日々実感されているようです・・
「コーチングに際しては、「言葉」で伝え難いので、何も教えないようにしています」と土江氏。え!?それは一体・・
「ある糸口までは与えるのですが、それを自分で紐解いていかないとわからない。「言葉」で言われると解釈の仕方によって全く違った方向に向かったりするのを自分もこれまでに経験してきましたし。いまナショナルチームで活躍している選手を見ても、コーチにべったりくっついている選手は少ないと思います。いろいろな教えを鵜呑みにせず、ディスカッションを通してイメージを膨らませる。為末選手にしても朝原選手にしてもそのタイプですね。ですのでたくさん言葉を掛ければ掛ける程マイナスになることもあるんですよ。コーチングの放棄、と言われたらそれまでなんですが(笑)」

「アスリートFM]解説者 土江寛裕さん
始終穏やかに話す土江氏でしたが、大阪世界陸上で謎の不調に陥った日本選手団への批判に対しては語気が強まります・・
「(選手のタレント化が原因ではないか?との批判に対し)そこに因果関係を求めるのはおかしい。テレビに出ていたから結果が悪かったというのは全くもって日本人的な発想ですね。じゃあテレビに出なかったら同じ結果にならなかったのか?というのはあり得ないと思います。別々に考えないと、問題の本質が見えてこない」
自身も32歳まで富士通で現役生活を送り、今まだ現役第一認者の朝原選手は35歳。「続けられる環境さえあれば日本陸上は強くなれる」という事実を体現されている土江氏だけに、大学以降陸上を続けられる環境が少ない現状は陸上競技に関わる全ての人たちにとって残念でならない事でしょう。「日本記録」を世界と戦えるまでに高めるのと同時に、「陸上」を社会にアピールし続ける大切さを、競技者として携わったキャリアを持つ方ならば皆痛感していらっしゃるのではないでしょうか?
「陸上をメジャーにしよう」と頑張る選手らへの批判には一部同意できるとしながらも、選手らの真意を察そうとしない姿勢に怒りを感じていらっしゃるようです。
今回私も氏の「想い」に触れ、「陸上」への見方が変わるのを感じました・・


「全中(全日本中学陸上競技選手権大会)とインターハイの種目に(女子棒高跳を)入れてあげて欲しいですね。どうしても入っていないと取り掛かれないんですよ。脚が速い子は100メートルやります、遠くに跳べたら幅跳びで、「棒高跳びがしたい!」と思ってもインターハイじゃ点が取れないじゃないか、で終わってしまうんです」

昨年の日本選手権で左膝前十字靭帯を故障、今季完全復活を目指す女子棒高跳びの中野真美選手。

女子棒高跳びの中野真美選手
中野真実選手
「身体のみが基本の陸上競技で、唯一「道具」を使う事が許されている事、それによって自分の身長の何倍もの高さを跳ぶ事ができますし、「道具を使う」難しさ故、単に身体の調子がよいだけで記録が出るものではなく、いろいろな要素が絡み合っている点が面白い」と棒高跳びの魅力を語る中野選手。ですがその一方で「道具を使う」ために施設がいる、また指導が専門的になってしまうので、指導者のいる地域にのみ選手が集まってしまい、講習会等で普及に努力しながらもなかなか競技人口が増えないというジレンマを生み出しているそうです。実際ほとんど体験する機会のない棒高跳び・・ならば競技を「見て楽しむ」ためにはどのような点に注目し観戦したらよいのでしょう?
「そうですね、いかにポールが大きくきれいにしなるか、そこから倒立姿勢への移行、あと(飛び越える)バーの位置も変えられるのですが、跳躍の頂点と合わせるのも成功と失敗に大きく関係してきますので、跳躍前の調整も見所の一つだと思います」
昨年怪我をされて以降、「元の自分に戻す」のではなく「新しく作り上げよう」と努力されているそうですが?
「冷静に考えた時、元の状態にはならないと思いましたので、下半身が弱くなるのであればもっと(反発力の強い)硬いポールが使えるように、上体を鍛えて突っ込みの動作を徹底的に修正しているのと、あと助走の際に体調が悪かったりすると膝を庇った走り方になってしまうので、体幹と股関節周りを鍛えています。でも今の状態で(4m)20を跳べることができたので、少し先が見えてきたかな?とも思いますね」
筋力トレーニングで鍛えられる「絶対筋力」ではなく、跳躍することでしか鍛えられない「相対筋力」を必要とすることから、助走までは陸上的、跳躍後は新体操的な要素との「バランス」を求められる特殊な競技、棒高跳び。
新進著しい選手のダイナミックな跳躍ばかりではなく、新たな「バランス」を探し出そうとしている中野選手の跳躍を見つめ続ける先に、「陸上競技」を通して大切なメッセージを受け止められるような気がします。

「知」を与える、「知」を読み解く手助けをする、そして何度も苦境に陥りながらも挑み続けることを諦めない「陸上競技者」の方々。
その知識、その献身、そして不屈の精神に少しだけ触れることができた、忘れられない特別な日でした。



●体験取材の感想●

「何やっとんじゃあのアンちゃんは?」

中野選手のインタビューに向かう、我ら怪しい一団が突き進むその廊下の中央あたり、壁に背中を預けデロ〜ンと横たわる人物が。近づくにつれエスコートして下さった横浜市体育協会・今井さんの表情が歪む。

「タ、タイソン・ゲイだ・・」

「・・こんにちは・・」聞こえるか聞こえないかのトーンで声をかけた、同じく体育協会・田中さんを先頭に恐る恐る足元を通り過ぎる我ら一団。ギロッと睨むゲイ。。「ここでもしコケたりしたら、しばらくはアサファ・パウエルの天下に・・」と思った途端、掌を伝ういやぁなカンジの汗・・

なんだかよく判らない非日常的な緊張感を味わえた今回の体験取材を、私は一生忘れる事はないでしょう!

このような機会を与えて下さった横浜市体育協会の田中さん&今井さん、本当にありがとうございました!




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